書 籍:チーム・オベリベリ
著 者:乃南アサ
出版社:講談社
発行日:2022年6月30日 第1刷発行(2021年3月17日 第4刷を購入しました)
『チーム・オベリベリ』は、主人公である渡辺カネの兄である鈴木銃太郎、渡辺勝(カネの夫)、そしてリーダーの依田勉三の3人が株式会社“晩成社”の幹部になって、北海道帯広市を開拓する物語です。
晩成社の名前の由来も記されています。
明治15年。
北海道といえば、ついこの間まで蝦夷地と呼ばれていた土地だ。露西亜(ロシア)にも近く、いつ攻め入られるかも分からないという、遠く遥かな極北の大地だという。気候は厳しく熊や狼が跋扈する、この上もなく危険な場所だと聞いている。どうしてまた、そんな最果ての地に、しかも開拓に行くなどということを思いついたのだろうか。
こちらの書籍を読んで、私が初めて知ったことがありました。
・ 開拓するとき、役場に手続きをして許可を得ていたこと
・ 大津がオベリベリより開けていたこと
・ 開拓の大敵が、大群のバッタと霜であること
・ アイヌの人たちと協力して開拓していたこと
開拓すると同時に、そこで生きて行くために農作物を育てる必要があります。
それが、バッタと霜のせいでこれまで育てた農作物が一瞬にしてダメになること、つまり努力したことが一瞬にして無駄になることの虚しさを痛感させられました。
「開墾の初めは豚と一つ鍋」という言葉が誕生した話も登場しました。
晩成社の幹部である3人が集まって、酒を飲みながら出来あがった一句のようです。
帯広を開拓した人といえば、やはり依田勉三が真っ先に思いつきます。
しかし、依田勉三がどういう人なのか、まったく知りません。
しかし、こちらの書籍は“渡辺カネ(旧姓:鈴木)”が主人公なので、依田勉三の人となりを客観的に知ることができました。
開拓を始めてから5-7年間ほどの苦労が綴られていました。
小説なので主人公の心情などはフィクションかもしれませんが、それでも開拓の苦労や晩成社という株式会社としての事業の苦悩などが詳細に記されていました。
現代のような情報通信、移動手段、重機がない時代、何もかも手探りで開拓し、この土地に最適な作物を試行錯誤していくのは、じつに過酷だったと思います。
手間ひまかけて育てた作物が大群のバッタや霜で全滅して、努力が水の泡になる虚しや喪失感はとても耐えがたいことであったと思います。
そのうえ、晩成社の株主からの借金が積み重なり、半ば身柄を拘束されたような状態で開拓を続けていかなければならない精神的な苦悩もあったことでしょう。
オベリベリ(帯広)やオイカマナイ(生花苗)が発展したのは、開拓者の存在があったことを決して忘れてはなりません。
ここで暮らす1人として、先人の方々に感謝を伝えます。
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