書 籍:正欲
著 者:朝井リョウ
出版社:新潮社
発行日:2021年3月25日 発行(今回は、家族から”2022年4月5日 第11刷”を借りました。)
【目次】
正欲
こちらの書籍は、家族から「読んでみて」と言われて読みました。
気になったのは、「タイトルが『性欲』ではなくて、なぜ『正欲』なのか」ということです。
冒頭、著者の考えが記されています。
そのテーマが、「明日、死にたくない」です。
そのように考えながら生きていくと、歩き慣れた世界がどのように見えるか。
一般的な”性欲”ではなく、”自分に正直な欲求”とは何かを描いた本です。
まず、物語の最初から犯人が登場します。
犯罪名も解っています。
ただ、なぜそのような犯行をしたのか、それを語ろうとしません。
次に、検事が登場します。
検事は逮捕された被疑者がなぜ犯行に及んだのか、その動機を明らかにしようとしますが、上手くいきません。
おもな登場人物は、検事、検事の妻とその2人の子ども、大学生の被疑者と彼に好意に思っている女子大生、被疑者の夫とその妻などです。
検事の子どもが不登校という家庭環境での夫婦または親子の関係性は?
性器以外のところに性欲を感じるという少数派の人たちが、性器に性欲を感じる多数派のなかで生きていく辛さとは?
また、お互いに必要以上の関係性を求めない夫婦の一方が逮捕されたときのもう一方の反応とはどういうものか?
多数派、少数派、多数派の考えが一般的な考え、少数派の考えが特異(奇妙)な考えといった固定観念を振り払い、無の気持ちで接することが大切であることを感じました。
最初から自分と否定的な考えを持つ相手に話をしようとは思いません。
「どうせ、否定されるから」
本人が意見を言っても、相手にそれが少数派といわれる考えとして捉えられて「その考えは間違っている」と否定されたら、本人は何も言えなくなります。
人と接するときは、まず相手を受け入れる。
そうしなければ、相手との関係は近づくことはありません。
それが検事ならば、なおさら…。
人は、誰でも「自分が正しい」と思って生きています。
よく「人の数だけ正義がある」とも言われます。
自分の考えが多数派なのか、それとも少数派なのかは、誰にもわからない。
教訓。
「李下に冠を正さず」
紛らわしい行動はしないこと。
このことわざを知ったのは、衆議院議員であった故・谷垣禎一(たにがきさだかず)氏がテレビで発言していたことがきっかけでした。
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