書 籍:一気読み世界史
著 者:出口治明
出版社:日経BP
発行日:2022年11月21日 初版第1刷発行(初版第1刷を購入することができました)
【目次】
第1章 アフリカを旅立った人類が、大国統治の技術を獲得する
第2章 人間が考えられることのほぼすべては、紀元前に生まれた
第3章 寒冷化する世界で、2つの世界帝国が領土の半分を捨てた
第4章 諸部族の争いを制した拓跋部とフランク族、2つの国家の躍進と衰退
第5章 温暖化による人口増加が世界を大きく変えた200年
第6章 クビライのグローバリゼーションの大波が世界を襲った
第7章 鉄砲、印刷に新大陸到着、技術革新が「ヨーロッパ」を形成していく
第8章 アジア4大帝国の最盛期、ヨーロッパの「国家」意識はいまだ希薄
第9章 産業革命と国民国家、ヨーロッパが世界の覇権を握る偶然
第10章 ネーションステートが拡散し、アジアから欧米に覇権が移る
第11章 総力戦の時代、アメリカが台頭し、日本は「開国」を忘れる
第12章 冷戦の恩恵で復興した日本は停滞に陥り、GDPの勝者は中国
私が『一気読み世界史』という書籍を知ったのは、Instagram(インスタグラム)です。
何気なく閲覧していると、広告でこちらの書籍が紹介されました。
世界史を勉強している真っ最中の私にとっては、とても気になる書籍です。
インターネット検索で書籍の内容を確認し、購入を決定しました。
『一気読み世界史』の特徴は、2つあります。
まずは、口語体で記載されていることです。
文章で「~でしたね」「めちゃめちゃ」という言葉が出てきます。
また、誰かが話したと思われる言葉を「~ええんや」「~へんで」「~しなければあかん」といった関西弁のような記述をされています。
書籍を読んでいて、親近感が生じます。
次に、資料がとても少ないです。
史料はともかく、やはり世界史なので地図は多めに掲載してほしかったです。
モンゴルから攻めてくるのを北虜(ほくりょ)といいます。南から倭寇が攻めてくるのを南倭(なんわ)といいます。要するに、世界商品を山ほど持っている中国というデパートが閉鎖されると、みんなが困って、怒って、「開けろ」とドアをがんがんたたく。それが「北虜南倭」だと考えればわかりやすいでしょう。
ちなみに、江戸時代の日本がなぜ鎖国をできたかといえば、世界商品がなかったからです。安土桃山時代に金や銀を掘りつくしたので、「もう日本にいっても金も銀もないわ」というわけです。だから、「鎖国したいんだったら放っておこう」となったのが、日本が鎖国をできた理由で、鎖国も自分勝手にはできないことがわかります。
鎖国をするには、相手に見向きもされないから成立する。
たしかに欧米列強が中国に進出したとき、中国には茶など魅力的な商品があったから自由貿易を要求してきました。
イギリスの場合、中国から茶を輸入して失った銀を回収しようと、アヘンを密輸させました。
これが17世紀の100年です。このころはまだ「国家」という概念は希薄で、すべてが君主や諸侯の「領土」という感覚でした。だから、誰かが弱れば、ちょっかいを出して領土を広げてやろうという、火事場泥棒のような行為が横行していた。そう考えれば、わかりやすいと思います。
17世紀について、当時の世界の様子を簡単に表現していて、とても解りやすいです。
ロンドンの議会に北アメリカの代表はいません。それにそもそも、北アメリカで戦争したのもロンドンの議会が勝手に決めたことで、そのためにアメリカ人も徴兵されて、土地も荒されたわけです。さらに、その金を払えというのですから、怒ります。ここに「代表なくして、課税なし」という有名な言葉が生まれます。意見をいわせないで、金だけ徴収するなんて許せないという怒りが、アメリカ独立の根源です。
アメリカ独立戦争を説明する際、ほかの書籍ではよく『ボストン茶会事件』を取り上げるのですが、こちらの書籍では記載がありませんでした。
1773年、イギリス領マサチューセッツ湾直轄植民地のボストンで、植民地人の急進派がイギリス本国議会に対する抗議として、停泊中の船舶から積み荷の茶箱を海に大量放棄した事件で、アメリカ独立戦争への転機になった出来事とされています。
エドマンド・パークは、平たくいうと「人間は愚かやで」と考えました。「愚かな人間が愚かな頭で考えたものなんか使いにくいで」ということです。だから、今までやってきたことは不都合がない限り、変えなくていいということです。
パークによって近代的な保守主義が始まります。「保守」とは、今あるものはとりあえずそのままにして、困ったことが起きたら変えればいいという考えかたです。
「保守」と対置される「革新」とは、「人間は勉強したら賢くなる」と考えます。だから、「何でもきちんと考えて決めた方がいい」ということです。(中略)革新というのは、特に困っていなくても、理性で考えておかしいなら変えていこうという考え方です。これが本来の「保守 対 革新」の意味です。
これは、とても解りやすい説明です。
最後はやや駆け足のような内容でしたが、概要は理解できました。
江戸時代の老中である阿部正弘が、たびたび登場します。
阿部正弘が開国のときに描いたグランドデザイン「開国・富国・強兵」をもとに、その後の国家戦略について検証されています。
なぜ、日本は太平洋戦争(第二次世界大戦)で敗戦したのでしょうか。
出口さんは、「日露戦争で勝ってしまったばかりにのぼせて、開国を捨ててしまった。開国をせずに、富国・強兵だけを推進したのが、日本の失敗の原因だと思います。」と分析しています。
世界史の入門書として、お勧めの1冊です。
人類5000年史を一気通貫 エキサイティングな知の冒険
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