地政学と冷戦で読み解く戦後世界史

書籍

書 籍:地政学と冷戦で読み解く戦後世界史
著 者:玉置悟
出版社:講談社
発行日:2023年2月27日(今回は第1刷を購入することができました)

【目次】
 はじめに
 序章 米ソ冷戦に至る道
第1部 冷戦前期 米ソ対立がエスカレートした時代
 第1章 冷戦のはじまり
 第2章 ベルリン・ロックダウン
 第3章 核兵器開発競争が始まる
 第4章 朝鮮戦争の謎を解く
 第5章 米ソ核戦争が語られた時代
 第6章 ケネディ政権とキューバ危機
第2部 冷戦中期 変わり始めた時代
 第7章 ベトナム戦争の真実
 第8章 ニクソンによるアメリカ根本政策の大転換
第3部 冷戦後期 緊張と緩和の復活
 第9章 ポスト・ベトナム時代の到来と終焉
 第10章 レーガンの”強いアメリカ”とソ連の衰退
 第11章 ソ連の消滅 終章 冷戦後の世界 
 おわりに

こちらの書籍は2023年2月に発行されているので、ロシアがウクライナに侵攻したことから話が始まります。
理由には、何らかの原因があります。
本書にも、「なぜ世の中が今のようになったのかを理解するには、”今とつながる”世界の戦後史をしっかり理解する必要がある。」と記載されています。
著者が重要だと考えている箇所が太字になっているので、とても理解しやすい内容になっています。

アメリカ・イギリスとソ連は対立する関係であるのに、なぜ第二次世界大戦では同盟を結んだのでしょうか。
なぜ、アメリカは日本への参戦を持ちかけたのに原爆投下を決断したのでしょうか。
その根底には、共産主義が生まれる前の時代から続いていたイギリス(大英帝国)とロシア(ロシア帝国)の根深い対立がありました。

全体的にみれば、アメリカがソ連を敵視し、ソ連がそれに対抗する構図です。
その1つの例が、西側諸国の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)に対抗して、東側諸国がワルシャワ条約機構が発足したことです。

数々の冷戦が生じた原因は、当時のアメリカ大統領であるトルーマンの“トルーマン・ドクトリン”と呼ばれる反共政策であり、ドミノ理論を主張したことです。
トルーマンは、次々と共産主義の国家が生まれることを恐れたのです。
ちなみに、ドクトリンとは、外交の正式な根本政策のことを言います。
第1章で、アメリカとソ連の特徴を簡潔に表現している言葉がありました。
それは、「理由をこじつけるアメリカ、秘密主義のソ連」です。

冷戦を象徴する3つの出来事、つまり、ドイツの東西分割朝鮮戦争ベトナム戦争についても、米ソの各首脳の様子を取り上げながら詳細に記載されています。
それに伴い、冷戦は核開発競争と深く関係しています。
朝鮮戦争ではアメリカが(マッカーサーが)北朝鮮に原爆を投下する計画をしていましたし、キューバ危機ではソ連がキューバに核ミサイルの配備をしたときは人類滅亡の危機とまで言われました。

歴史に「もしもあの時……だったら」はつきものです。
著者は、「もしケネディが殺されていなければ、ベトナム戦争の拡大はなかったかもしれない。これは荒唐無稽な想像ではない。」と言い切っています。
これまでのケネディ大統領の言動を振り返れば、可能性は十分にあるとして、詳細が記載されています。

ほかには、ドルの需要が世界中で急増した理由として、アメリカが“オイルダラーを創出したことなども記載されています。

最終的には、ソ連が崩壊して冷戦の時代は終わりました。
ソ連と中国は同じ社会主義国家ですが、当時の首脳であるソ連のゴルバチョフ書記長と中国の鄧小平の改革の目的が、その後の明暗を分けました。

戦後世界史を通していくと、なぜロシアがウクライナを侵攻したのかがよく解ります。
これまでの歴史とNATOとロシアの地理的な関係を知ることができれば、侵攻した理由は明白です。
ただ、侵攻を正当化することがあってはなりません。
第三次世界大戦に拡大しないこと、平和な世界が訪れることを、ただ願うばかりです。

 

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