辻村深月『傲慢と善良』

書籍

書 籍:傲慢と善良
著 者:辻村深月
出版社:朝日新聞出版
発行日:2019年3月30日 第1刷発行(2024年10月30日 第11刷発行を購入)

第一部(第一章-第六章)
第二部(第一章-第三章)
エピローグ

辻村深月氏のことは以前から知っていた。
もちろん、大ヒットの本が多数あることも知っていた。
しかし、これまで一度も読んだことがなかった。
理由はとくにない。

今回こちらの本を読んだきっかけは、BSテレ東の番組『あの本、読みました?』である。
番組で、ある作者が『傲慢と善良』を紹介していたのがきっかけで気になり始めた。
その後、「辻村深月スペシャル『傲慢と善良』秘話」と題して本人も登場され、本について話していた。

こちらの書籍は第1刷を発行してから4年以上も経過している。
だが、未だに人気がある。
書店を訪れるときは『文庫本しかないんだろうなぁ』と思っていた。
実際、先述の番組においても文庫本を手に取りながら紹介していた。
そう思いながら店内を歩き回っていると、なんと単行本を発見した!
人気がある作品なので手にした書籍は第11刷であったが、迷わずに購入した。

こちらの書籍は恋愛小説である。
「婚活」をテーマにした内容であるが、結婚観を見事なまでに表現している。
主人公は架(=かける)と真実(=まみ)であるが、その2人の恋愛感情に対して架の女友達の美奈子が鋭く指摘している。

美奈子「じゃあさ、今、何パーセントくらい結婚したいの? 架」
美奈子「あの子と結婚したい気持ち、今、何パーセント?」
架  「―――70パーセントくらいかな」
美奈子「今私、パーセントで聞いたけど、それはそのまま、架が真実ちゃんにつけた点数そのもの
    だよ。架にとって、あの子は70点の彼女だって、そう言ったのと同じだよ」
美奈子「だって、架、たとえばアユちゃんだったら100点か、120点をつけたでしょ」
美奈子「70点くらいの気持ちであの子のこと引き止めるのは残酷だと思わない? もし結婚する気がな
    いなら自由にしてあげなよ」

『結婚したい気持ち』『その相手への評価』と言い換えるところが、潜在的なところが浮き彫りにされたような感じがした。
これまで考えもしなかったことであったが、このように言葉として書き表されると、とても現実的で衝撃を受けた。
これが辻村深月氏の力であり魅力的なところなんだと実感した。

・ 世間知らず…
・ まるで自覚がなさそうに…
・ 全部「心配」という言葉で縛り…

これは、真実が母に対する思い。
ひとつ間違えると、親子関係が崩壊する考えである。
親というのは、つねに子どもの将来を心配して不安になる。
その不安は「子どものため」という言葉を利用して、結局は親自身の不安を取り除くためである。
親の多くは、自分自身で選択した道を歩んできたはずである。
ところが、子どもに対しては話が別になる。
親は親自身の不安感を取り除くためなのか、無意識に? 無自覚に? 先回りして子どもの将来のレールを敷きたがる。

本を好きになる。
作家を好きになる。

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