今年、私が読み終えた書籍を紹介します。
書 籍:悪党たちの大英帝国
著 者:君塚直隆
出版社:新潮社
発行日:2020年8月25日(初版を購入することができました。)
第1章 ヘンリ八世… 六人の妻を娶り、うち二人を処刑した「暴君」
第2章 クロムウェル… 王殺しを行った英国史上「最凶の独裁者」
第3章 ウィリアム三世… オランダから来た不人気な「外国人王」
第4章 ジョージ三世… 新大陸アメリカを失った「愛国王」
第5章 パーマストン子爵… 砲艦外交を展開した「ポピュリスト」
第6章 デイヴィット・ロイド=ジョージ… 王権と議会の「敵役」
第7章 ウィンストン・チャーチル… 日独を倒した「最後の帝国主義者」
私が『悪党たちの大英帝国』を購読したのは、書籍の名前がとてもインパクトがあったからです。
また、500年ほど前に遡った頃からの掲載も、私にはちょうど良かったです。
しかし、苦手なところもあります。
イギリス史は、とにかく○○世という人物が多すぎて、いつも私の頭を混乱させます。
途中で何度も読み返し、非常に効率が悪いです。
上述の7人のうち、私が知っていたのは、クロムウェルとウィンストン・チャーチルの2人だけでした。
高校時代の世界史で学習した”清教徒革命”と”第二次世界大戦”で、それらに深く関係する人物という程度の知識です。
私が本書で興味をもったのは、まず第5章のパーマストン子爵です。
とくに印象に残った部分を2つ抜粋します。
【パーマストンは、ヨーロッパ協調を成し遂げた一方、アジアではイギリス本国の国益を情けな容赦なく追及した。二度のアヘン戦争(1840年、1856年)に外相・首相として関与し、清王朝の中華帝国に不平等条約を押しつけていった。幕末に生じた生麦事件(1862年)、薩英戦争(1863年)、下関条約(1864年)は、いずれも第二次パーマストン政権時代のイギリスと事を構えた大事件であった。】
【彼は自由主義を愛し、道徳心を発揮したこともあった。大西洋で横行する奴隷貿易の取り締まりがその最たる事例である。ナポレオン戦争後にウィーン会議に集まった国々を中心に、戦後はアフリカからの黒人奴隷の取引を全面的に禁止する条約が結ばれた。ところがポルトガルやスペインの商人が相変わらず密貿易を続けていたのだ。これをイギリス海軍を使って全面的に取り締まる一方、スペインやポルトガルと粘り強い交渉を続けて条約を結び直し、大西洋から奴隷貿易を一掃したのがパーマストンそのひとだったのである。】
パーマストンが、清王朝との外交や幕末の日本との関わりについて、これほど深かったことを知りませんでした。
また、負の遺産である大西洋での奴隷貿易を一掃したのがパーマストンであることも初めて知りました。
次に、第6章のデイヴィット・ロイド=ジョージです。
彼が、俗にいう”三枚舌外交”を指示した張本人であったことを初めて知りました。
これまで読んだ書籍では「イギリスは…」という表現だけで記載されていましたが、この書籍では、そのイギリスを指導した人物を詳しく記されています。
● フサイン・マクホマン協定(1915年)… メッカの太守フサインとの間でオスマン帝国に反乱を起こすことを条件に、アラブ族の独立と建国を支持すると約束した。
● サイクス・ピコ協定(1916年)… フランスとロシアとの間でオスマン帝国を分割し、パレスチナを国際管理区域とすることを定めた。
● バルフォア宣言(1917年)… 戦費の援助を条件に、ユダヤ人のパレスチナでの建国を支持すると表明した。
これが、現在でも続いているパレスチナ問題の原因です。
そして、ウィンストン・チャーチルです。
彼は、まさに第二次世界大戦時の首相でした。
フランスの降伏が決まるや、チャーチルはすぐさま議会でこう演説しました。
「フランスの戦いは終わった。いまやブリテンの戦いが始まろうとしている。『このときが彼らの最も輝かしいときであった』と、後世の人々に言われるように振る舞おうではないか!」
その後、”Battle of Britain”といわれる空中戦が始まりましたが、ドイツの攻撃からイギリスを守りました。
彼は、首相であり、歴史家でもありました。
「戦争には 決断、敗北には 挑戦、勝利には 寛大、平和には 善意」
この言葉は、彼の代表作『第二次世界大戦』の基本的な「教え」として書かれています。
世界史に関する書籍を読んでいると、よく「イギリスは…」と記載されていることが多いです。
今回のように、「イギリスの○○が…」と個人に焦点が当てられていると、より深く読み解くことができ、その人の考えかたを知ることができました。
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